登っても走っても変われない

山登りやランニングの趣味を書き留めておき、老後、思い出に浸る為の備忘録

信越五岳トレイルランニングレース 2019 100mile その②

SHINETSU FIVE MOUNTAINS TRAIL 2019 100mile 2019/09/14~16
f:id:nyamarun:20190918230156j:plain
妙高青少年自然の家に向かうロード
 アパには30分前には到着したかったがしょうがない。55kmなのに倍の距離を来たような疲労感を感じていた。ジェルではダメなのか?デボしてあったくるみパンをデボしてあった350mlのコーラで無理やり胃に流し込む。頼む、身体に力をくれ!15分ほど滞在してアパを出た。
 少し休んだせいか30分ほどは走れたが、下りになった時から身体が重くなり、加えて軽い吐き気が襲いかかる。くるみパン逆効果だったか……。ガスター10とムコスタ錠を飲んで耐える。アパから次の妙高然の家までが今回の私にとって最悪の苦しい区間になってしまった。苦しみながら何とか川沿いまで降りて単調な川沿いを進む。川沿いでは、何とかせねばと焦りからかなり無理して走るが身体に力が入らず、歩きが半分は混ざってしまう。

f:id:nyamarun:20190918230209j:plain
第2関門 国立妙高青少年自然の家(72km)
 橋を渡って舗装道路になってからは、エネルギー切れで全く走れなくなった。そうして7時30分頃、身も心も折れた状態で妙高然の家に到着した。呆然と腰を降ろし考えた。もう12時間以上続いて身体が不調であったということは、もはや体調の改善は無理だろう。それにこれではもう完走も無理だろう。この時私はたしかにリタイアするつもりであった。最初に自分に果たしたルールのことはもうどうでも良くなっていた。

f:id:nyamarun:20190918230230j:plain
坪岳(76km)
 何も食べられず、ただ腰掛けて周りのランナーを見渡す。このレンジで元気なランナーなど1人もいない。皆、体調が悪そうだ。きっと私も側から見ると死にそうな表情なのだろう。それでも周りのランナーは1人、また1人と立ち上がり先に進んでいく。先に進むランナーの目は、みんな決して諦めていない!!そうだ、今日は自分から終わりにしてしまわないんだった。足は何も問題はない。歩ける限り前に進もう。周りのランナー達に勇気づけられて、エイドを後にした。

f:id:nyamarun:20190918230238j:plain
不動滝(78km)
坪岳の登りもフラフラ。坪岳の先のゲレンデ直登、関温泉横を過ぎると滝が見えた。そして再びゲレンデの直登。特に2回目のゲレンデ直登はエグい。加えて日が昇り強い日差しが容赦なく降り注ぐ。

f:id:nyamarun:20190918230247j:plain
斑尾山方面を望む
 壁のようなゲレンデを牛歩のようなスピードで登りながら考えた。『何時までに次のエイドにいかなければならない。』『次の関門時間に間に合わなければならない。』そうだ、いつしか仕事と同じように『〜〜しなければならない 』に縛られていたのではないか?自己命令は精神的によろしくなく、基本的に楽しくない。それは仕事の中だけで十分だ。それを楽しい趣味の筈のトレラン世界に持ち込むのは、そもそも私の中のルールではなかった筈だ。次のエイドには関門時間は設定されていない。少なくとも第3関門の黒姫まではいける。行けるところまで行って、いや、黒姫まで行きたいな!宴会隊エイド見てみたい!身体は重いままであったが、心は随分軽くなった。
 ゲレンデを登り切ると「赤倉清水」という湧き水があった。復活の水と看板があった。その水の美味しいこと美味しいこと。ゲレンデを降りるころには薬が効いてきたのか、胃腸も弱っているなか、幸いにも少しづつのジェルは受け付けてくれるようになった。

f:id:nyamarun:20190918230256j:plain
池の平スポーツ広場(88km)
 足に応えるゲレンデの下りを経て池の平には12時少し前に到着。到着して腰を下ろすと、あるランナーが「リタイアします」と宣言しているところだった。一瞬心が動いてしまったが、せっかくのかんずりラーメンを胃に負担ないようにゆっくりゆっくり食べた後、エイドを出た。足は生きてるようだ。足だけは少し休むと回復している感がある。

f:id:nyamarun:20190918230304j:plain
謙信の道
 この体調では、もう次の関門には間に合わないだろうが…………今や、「間に合う間に合わない」というようなことはどうでもよくて、ただ可能な限りトレランをして前に進もう。再びゲレンデを超えて、その後謙信の道へ。途中の民家でお孫さんとお爺さんが美味しい水とシャワーを頭から掛けて頂いた。三連休にお爺さんの家に遊びに来たのだろうか?人との交流がとても楽しい。コースの誘導員が、「まだ大丈夫だ!キロ7分でがんばれ!」と声援をくれる。「ありがとうございます!」元気よく応えるが、当然身体は動かないけれど、それもどうでもよい。そんなやりとりが楽しいからだ。

f:id:nyamarun:20190918230314j:plain
宴会隊エイド
 そういえば、この大会のエイドのスタッフ、ボランティアはとても親切な対応、そしてコースの誘導員は皆、暖かい声を掛けて勇気づけてくれていた。この大会のホスピタリティは素晴らしい。それなのに私は自分が苦しいあまり、ここまで来るのにそれに気づかず、気づいても答えれないことばかりであった。自分のことしか考えられなかったから、この有様になったのだろう。でも、ここまで来てやっとそういうことに気づいた。
 集落を超えて110kmのコースと合流。途端にコースはランナーで賑やかになる。そして楽しみにしていた宴会隊エイドに到着。半分凍ったパイナップルが激ウマ。子供達がコーラを注いでくれる。そこで気持ちだけはすごい元気になる。私の趣味のトレランは黙々と苦しむものじゃないんだ、笑いながら苦しむものなんだと、わかっていた筈のことを再認識した。

f:id:nyamarun:20190918230322j:plain
黒姫近くから斑尾山方面を望む
 水力発電所あたりからがこのセクションの山場のようだ。残り4.7kmと言われてから長い長い。110kmランナー達は必死に先を急いでいる。110kmランナーの関門は15時30分。関門時間には余裕なのだろうが、この後の渋滞区間を考えるとなるべく早くたどりつきたいのであろう。私も一生懸命に前に進むが、途中からは110kmランナーの邪魔はしないように道を譲り声をかけながら進む。ようやく、関門時間を20分ほど過ぎた時間に黒姫エイドに到着して私の信越五岳トレイルレースは終了した。完走できなくて悔しいが、ラスト30kmで気づかせてもらった多くのことを思うと、自分から止めてしまわないで本当によかった。