登っても走っても変われない

山登りやランニングの趣味を書き留めておき、老後、思い出に浸る為の備忘録

第3回トレニックワールド100mile & 100km in 彩の国 <South編>

TW100km  2018/05/19-20

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大高取山に向かう途中での越生夜景(肉眼で見ると本当にきれい)

 ドライウェアを着てTシャツを交換、アームウォーマーも装着。靴下も替えようと脱いだところ、左親指の爪が割れて血が滲んでいた。暗くなって足元が見えなくなってきた時に、思いっきり大きな石を蹴り上げた時の怪我っぽい。カットバンで応急措置をして新しい靴下を履く。痛くはないので大丈夫そうだ。外に出ると風が強く思わぬ寒さに身体が震える。低体温症になりかねないので上着も羽織り手袋もする。トイレに行ったりして、結局出発したのは20時30分ごろ。
 しばらくロードを進み、墓地の中を通って大高取山へ向かう。きつい登りで早くも悶絶する。暗い中懸命に進むが、左手の木々の間に見える街の灯りは一向に遠ざからない。本当に山奥に向かって進んでいるのだろうか?精神的にも追いつめられる。

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桂木観音エイド(58.0km地点)

 暗い中進むとエイドは突然現れた。22時頃桂木観音エイドに到着。7kmあまりしか来ていないのに疲れ果てた。足も終わった感がある。自動販売機横のベンチに座り込む。あと何キロだろうか。暖かいシチューを食べながら途方に暮れる。それでもシチューを食べて少し元気が出たので出発する。しかしこの後、私には更なる地獄が襲いかかることになる。
 エイドを出てすぐにトレイルに入る。平坦で少し下り基調で走りやすい道だ。そこを抜けるとロードに出る。ロードに出てしばらくすると走れなくなり、トボトボ歩き出す。そこへ新たな地獄が襲いかかる。それは「睡魔」であった。心の奥から眠くなってきた。走れば眠気がなくなるかと、ちょっと走ってみたが睡魔の威力が勝る。するとロードの登り坂の脇に果物や野菜を入れるコンテナが裏返しに置いてあった。まさにここに座れ!と言わんばかりに。そして私は吸い込まれるようにコンテナに腰を掛ける。トレイルに入っても、同じような状況が続く。今度はコンテナではなく切り株が私を待っている。そこに腰を掛けて5~10分位ウトウトして、また歩き出す。これを何回繰り返したことだろう。こんな時は思い切って15分でも20分でも寝てしまった方がいいのはわかっているが、この日は風が強く体感が寒いので寝るに寝られない状態が続くという悪循環であった。

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高山不動尊エイド(66.5km地点)

 睡魔と闘いながら(闘い負けながら)、ようやく高山不動尊エイドに深夜の1時頃到着した。8.5kmを3時間も掛かってしまった。ここで秘密兵器メガシャキを投入する。もっと早く飲めばとも思ったが、早く飲むと朝方にまた眠くなってしまうのではないかと、この瞬間まで我慢したのだ。サンドイッチも食べて出発する。眠気が消えた!メガシャキの効果はバツグンだ。ただ胃に刺激が強そうなきがするので、メガシャキを飲む前にガスター10も投入した。
 西吾野駅に向かいパノラマコースを行く。途中からの新しいコースは、最後に激坂の下りが待っていた。両足の腿の筋が悲鳴を上げる。それに加えて新たな痛みが私に襲い掛かる!それは両足の甲の痛みであった。足の爪が割れてるので、足が動いて足の爪が靴の先端にぶつからないよう紐(サロモンなのでクイックレース)を締めている。爪が割れていなくても、かかとに合わせて紐を締めるのは基本的な靴の締め方だと思うのだが、この距離を走ってくるとこの靴が合わないせいなのか、足の甲の部分の締め付けが骨まで響いて痛みが出てきたのだ。登りや平坦は何ともないが、下り、特に激下りでの痛みは酷い。靴の紐を緩めれば痛みは収まるのだが、今度は足が靴の中で暴れるので、爪にダメージがいく。特に負傷している左足親指は、何もあたらなければ痛まないが、先端にあたると激痛がでてしまう。足が靴の中で動いて指先が靴の先端にぶつかるようでは、他の爪も逝ってしまうことは明白なので、紐を緩める選択肢はとれない。
 新たな痛みの出現に途方にくれて、子の権現への登り返しの激坂に挑む。登りに痛みはないのでトボトボ登っていると、何と再び「睡魔」が襲い掛かってきた!メガシャキ効果時間の短さに唖然とする。正味1時間ちょっとか?そして私は睡魔により、道の脇に転がる丸太に誘導されて座り込んでしまった。そんなことを繰り返して、ようやく子の権現の茶屋に到着。茶屋は大会の為に深夜営業をしてくれている。おばちゃんの暖かい対応でお味噌汁とお茶を飲んで少しだけ元気が戻った。20分ほど滞在しただろうか?夜が明けてきたので竹寺に向かわなくてはと歩を進めた。

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竹寺エイド(76.6km地点)

 竹寺エイドに4:30頃到着。すっかり明るくなってしまった。とん汁を頂く。暖かいものはとても美味しく感じる。身体は疲れきって満身創痍だが、まだ食べられる。食欲はなくても、口に入れて飲み込めば身体は受け付けてくれる。ただ、私は身体が小さいくせに燃費が悪いのかもしれないと思う。この大会では、エイドでしっかり食べても1時間~1時間半もするとおなかが空いて力が出なくなる。仕方がなくジェルを摂取すると力が戻るが1時間もしないうちに力が出なくなってしまう。このようなことの繰り返しであった。
 意を決して、最後の大ボス?飯能アルプスへ向かう。竹寺を出て天王山をとおるバリエーションルートを行くが、ロードに降りる時の激下りには涙した。飯能アルプスに入ると、手強いと思っていた大高山だが意外とあっさり到着。次は天覚山だ。簡単には到着しないとは覚悟していたが、覚悟以上に偽ピークに何度も心を折られかけた。ホント酷いアップダウンだ。ようやく天覚山へ到着。思わずベンチに座り込んで気がついた。私はいつも飯能駅の方から子の権現に向けて走っているので、大高山に手強さを感じていた。今回は逆に走っているので天覚山が手強く感じたんだと。
 天覚山から東吾野駅に降りる。このルートは通ったことがなかったが、なんとも酷い激下りルートであった。足の甲と太腿が悲鳴をあげた。それに加えて滑る滑る。ここで100マイルの1位の選手(とペーサー)に抜かれたが、その足取りの軽さに驚いた。やはり、もの凄い人達なのだ。

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吾那神社エイド(87.3km地点)

 フラフラになりならが吾那神社エイドに8:20頃到着。ここではうどんを頂く、とても美味しい。このころから関門時間を気にするようになった。ここまでボロボロになっているのに完走も出来なかったら最悪の最悪である。それでもしばらくの間、座り込んだまま立ち上がれなかった。
 ようやくエイドを後にする。足の甲の痛みは増すばかり。この時点では登りの方が安心、下りには恐怖するように状況となっていた。北向き地蔵までは登り基調。そこから奥武蔵グリーンラインに合流。そこではランナーが沢山走っていて応援してくれる。恐らく奥武蔵ウルトラマラソンに向けた練習をしているのではないかと。グリーンラインの脇からトレイルに入る。すると距離は短いが激下りが何度も現れて涙する。このころになると、私より下りで遅い人はいなかったから次から次へと抜かれた。一本杉から桂木観音まで、とても長く感じた。最後のほうは激下りでない普通の下りでも甲が痛むようになった。
 そしてようやく桂木観音エイドに12:15頃到着。おすすめのフルーツポンチのソーダ割(三ツ矢サイダー割)をもらう。足はボロボロ、身体は疲労困憊だけれど、まだ食べられる。こんなに食べられたことは今までなかったかもしれない。
 ここでやっと完走を確信した。20分位滞在したが30時間以内にはゴールしたいと思いエイドを出る。虚空蔵尊までは緩やかな下りで概ね走ることが出来た。そこからの登りでまたフラフラになってしまい、幕岩展望台のベンチでのびてしまった。最後の力を振り絞り大高取山の山頂を通過、そこからの下りは痛みでほとんど走ることが出来なかった。ようやくロードに出て、これでもう下りはないんだと思い安心した。


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ニューサンピア越生(106.3km地点)

 最後、みんなに応援されて坂を這い上がり、14:30分頃ようやくニューサンピア越生にゴールした。途中であきらめなくて本当によかった。でも自分自身に大きな感動も沸かず、何も変われていない。